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子どもの芸術体験

亀井直子さんin那珂南小学校(福岡市博多区)
2005年3月4日(金)2時限目〜4時限目

亀井直子さん音楽の授業音楽の授業
音楽の授業亀井直子さん音楽の授業
今日(4日)は、アートサポートふくおかのコーディネートにより、福岡市博多区の那珂南小学校に声楽家の亀井直子さんを迎えての音楽の授業を実施しました。
対象は5年生の3クラス。2週間後の卒業式で6年生にプレゼントすることになっている二部合唱曲「少年の日はいま」の指導のあと、ソプラノの美声を間近で鑑賞してもらうという1つぶで2度おいしいプログラムでした。

最初に子どもたちの歌を聴かせてもらい、歌うための姿勢の注意や体をほぐす運動をしてもう1度、歌う。歌詞の意味を読みといて6年生に何を伝えるのかを考えて、また歌う。2度3度と繰り返すうちに子どもたちの声の出方がどんどん変わっていきます。1クラスずつ同じプログラムで3回実施したのですが、亀井さんは子どもたちの歌を聴いて、どこに指導の重点を置くかをすぐに判断、あるクラスでは早口言葉で口の動きを滑らかにし、あるクラスでは歌詞のなかで「一番大事な言葉は何?」と言葉にのせて伝える「気持ち」を探らせる。時には大きな声で子どもを制止つつ、一緒に体を動かし・・・これを3時間ですから、とても大変だったと思います。

3クラスとも最後は亀井さんがシューベルトの「鱒」をドイツ語で歌って締めくくりました。「鱒」は5年生の音楽の教科書に載っている鑑賞曲の中から亀井さんが選んだ曲です。担任の先生方は事前学習として「鱒」をCDで鑑賞させておいてくださっていました。亀井さんが模造紙に日本語訳を書いて歌詞の内容を説明したあと歌いはじめると、子どもたちは吸いつけられるように歌に聴き入ります。

1組の子どもたちを後ろから見ていたら、歌が始まった途端にみんな前のめりになったのがおもしろくて、2組からは子どもの様子を前から観察しました。口をポカンと開けて見入っている子、友だちと「スゴイねぇ」と目を見交わしている子、ドイツ語の巻き舌が出てくるたびに口が「うわ」という形になる子・・・ビデオを撮りながら、ついニヤニヤしてしまいました。
ピアノやエレクトーンを習っている子には、ピアノ伴奏の中山文子さんの演奏もあこがれの的だったようです。3組の授業が終わったあと、給食の時間になっているにもかかわらず、5,6人の女の子が「何か弾いてください!」とピアノの周りに集まってきました。中山さんがリチャード・クレーダーマンのよく知られた曲を弾いてくださり、「鱒」の楽譜をプレゼントしてくださると大喜びでした。また、卒業式本番でピアノ伴奏の大役を務める子には短い時間ながら個人指導もしていただきました。

今回の3時間の授業を通じて、技術面の指導もさることながら、亀井さんが歌詞に気持ちを載せて伝えることの大切さを強調されていたことが強く印象に残りました。歌詞を1行1行読んで、「大事な言葉はどれ?」と尋ねられるのを見て国語の授業とのつながり、演劇との共通性を感じました。いい声を出すために体の余計な緊張をとったり、ほぐす運動をする様子は体育のようでもあり、やっぱり演劇のワークショップを見ているようでもあり。音楽による表現教育の幅広い可能性を感じる授業でした。

亀井さん、中山さん、大変お疲れ様でした。ありがとうございました。
あー、楽しかった!(古賀弥生)

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